うさぎの草むしり堂
主にオンラインゲーム(ラグナロクオンライン等)と日常についてつづられています。
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ブログ限定小説:Snow Sky
第一幕 夢から始まる物語(5)



 体をタオルで拭いてもらっている間、ボクは女の人、水月桜さんからいろんな話を聞いた。
 街でボクが倒れているところを助けてくれたあの人、雪代帝様(桜さんがそう言っていたので同じように様をつけてるんだけど)がこのお屋敷に連れてきてケガの手当てをしてくれた。
 誰にも任せることなく、ボクが目覚めるまでずっと傍にいてくれた事などを桜さんは話してくれた。

「優しい人なのですね、帝様は」
「はい、私たち使用人にとっても素晴らしいお方ですわ」

 桜さんに新しいパジャマを着させてもらいながら、入り口の外にいるはずの帝様を想った。

「でも――――」
 
 パジャマをキッと握り締めた。

「ボクなんかが、いつまでもここにいたらお邪魔になりますよね?」

 ケガが治ればすぐにでも出ていく。
 迷惑をかけたくない。
 そんな思いを持つボクを桜さんはこう言ってきた。

「心配ありませんわ。帝様も迷惑だなんて思ってなどおりませんよ」
「で、でも――――」
「それに、あなた様をここにお連れしたときの帝様は今まで見たことのないほど慌てていらっしゃいました。ずっとあなた様のことを心配なさっておいでですよ」

 それはあの人が優しいからなのでは、と言う前に桜さんは続けていってきた。

「お邪魔になるとかご迷惑をかけるなんて思わなくてもかまいせんから」

 ボクの後ろに立って髪にくしをいれてといてくれた。
 
「だからあなた様がここにいたいだけいてくださいばよろしいのですよ」

 記憶のないボクがここを出て行っても帰る場所などどこにあるのかわからない。
 それならば、どこにも行かずに記憶が戻るまでみかど様の近くにいてもいいのかもしれない。

「桜さん――――」
「はい?」

 お世話になるのなら何かをしてお礼をしなければと思ったボクは桜さんにお願いをした。

「ここでお世話になっている間だけでいいです。ボク、一生懸命働きますから何かさせてください」

 拾ってもらった上、こうしてケガの手当てまでしてもらったのだから何かしたい。
 でも、ボクは何が出来るのかわからない。
 働いたとしても失敗ばかりしてかえって迷惑をかけるかもしれない。
 不安だらけだけどお礼はしたい。
 ボクのお願いを桜さんは黙ったまま髪にくしをいれながら聞いてくれた。

「そうですね」

 くしを離して、何かを髪に結んでいくのがわかった。
 そして、棚に置いてある小さな鏡をボクの前に持ってきた。
 その中にいるボクの後ろ髪に紺色のリボンが結ばれていた。

「では、帝様の近くにいていただけないでしょうか?」
「みかど様の――――?」
「はい。ずっとお一人でしたので、誰か話し相手がいてくださればと思っていたところです」

 お話するぐらいならボクにでも出来るかもしれない。
 桜さんに「する」と言うと、優しく微笑んでくれた。

「それでは帝様と代わりますね」
「は、はい――――」

 桜さんはボクに丁寧におじぎをしてくるので慌てて同じようにおじぎをした。
 ドアを開けて桜さんが出て行く何か話してからみかど様が入ってきた。

「少しは楽になった?」
「は、はい」

 いすに座りボクの方を見てくる。
 じっとみていると、優しい目をしている事がよくわかったけれど、あまりにも見すぎるとなぜか体が熱くなる。

「桜さんから聞いたけど、私の話し相手になってくれるの?」
「は、はい」
「そう。ありがとう」

 そう言ってみかど様はボクの髪を優しく撫でてくれた。

「み、みかど様――――」
「みかど」
「えっ――――」
「様なんて付けなくていいよ。月姫にはみかどって呼んで欲しいから」
「で、でも――――」

 いきなりそんな事を言われてもどうしたらいいのかわからない。

「み――――」
「うん」
「み、みか――――ど――――」
「うんうん」

 みかど様はどこか楽しそうに頷く。

「――――さま」
「み―か―ど」

 ボクの顔の近くまでみかど様が近づいてきておでこ同士を当ててきた。
 その瞬間、ボクは何も考えられなくなり体中が沸騰するぐらい熱くなった。

「みかどって呼び捨てするまで離れないよ」

 このままだと自分がどうにかなってしまう、そんな気がしたので仕方なく、

「み―か―ど――――」
「うん。よく言えました」

 みかど様は嬉しそうな顔をした。
 それでもみかど様と呼ぶほうがいいとボクは思うしこんなに恥ずかしくなることはない。
 そう決めたのに目の前で微笑んでいる姿を見ると言えなくなってしまう。

「さあ、もう一度呼んでみて」

 ボクは諦めるしかないと思った。
 そして、

「み、みかど――――」
「うん」

 どこまでも嬉しそうにみかど様は微笑んでいた。

 そして、最後の最後までボクは「様」を付けて呼びかける事が出来ずに過ごす事になった。
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