うさぎの草むしり堂
主にオンラインゲーム(ラグナロクオンライン等)と日常についてつづられています。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ブログ限定小説:Snow Sky
第一幕 夢から始まる物語 


 ほら――――。

 雪がこんなにも降りそそいでいるよ――――?

 何もかもが冷たくなっていくのはこの雪のせいだけなの――――?

 『ボク』は『あなた』になにもしてあげられない。

 だって――――。

 『ボク』は『あなた』にとって風のように姿がなくて、

 水のように見ているのにすべてを掴み取ることができない存在だから――――。

 それでも、『あなた』は『ボク』をつかまえていてくれるの?

 離したりはしないの?

 二人だけの『約束』だから?

 雪はとけてやがて水になるけど、『ボク』は『あなた』の何かになれるのかな?

 ねぇ――――

 教えて?










 雪が降り続く中、ボクはたった一人で街を歩いていた。
 傘を忘れたからさしていないわけでも、わざとさしていないわけでもなかった。
 ボクはただ歩いていただけ。それだけなのに目の前を通り過ぎていく人たちは不思議そうな顔をしている。

(声をかけてくるわけでもないのに、どうしてそんなにボクを見ているの?)

 唇は接着剤でもつけているのだろうか、のどまできている言葉を吐き出そうとしてくれない。
 ぼやける視界が頼りなく揺れている。
 耳からは何か雑音のようなものしか聞こえてこない。
 もしかしたら、ボクは夢を見ているのだろうか。そうだとしたらなんて意味のわからない夢なのだろう――――。
 目が覚めれば温かいふとんの中にいて、変な夢を見たと誰かに言うのかな――――?

(夢ならもう覚めて――――)

 そう思ってボクは目を閉じると、思いが通じたの体中から力が抜けていき、おそらく前か後ろに倒れていっているのだと感じながらボクの意識は遠のいていった。



(温かい)
 
 そう思うほど意識が戻ってきた。
 目をゆっくり開けると光が差し込んできた。

「ここは――――?」
「ここは私の部屋だよ」

 どこからか聞き覚えのない、優しい声が聞こえてきた。
 光に目が慣れてくると、声の主を探すとすぐに見つけた。

「あなたは――――だれ?」
「う?ん、誰といわれても困るかなあ」

 どことなく困った笑顔を見せた、その人を私はもう一度「あなたはだれ?」と繰り返した。

「そういうあなたは誰なのかな?」
「私は――――」

 ごく当たり前の答えを口にしようとするが、どうしても出てこない。さっきまで覚えていたはずの自分の名前が出てこない。
 あれこれ考えていると、その人は口に手をあてて小さく笑いっているのが見えた。

「ごめんね。私とあなたは自分の名前がわからないみたいだから、ついおかしくなってね」

 そう言って今度は大きく笑い始めた。
 何がどうなっているのかわからない私はふとんの中に顔を沈めていき、なぜか恥ずかしくなった。

 笑いが収まると、その人はボクに手を伸ばしてきた。
 その動作がどことなく怖く感じたボクは思わず体を強ばらせた。
 頭の上にその手が触れて優しく撫でてくれた。

「綺麗な髪だね」

 何度となく撫でてもらっていると怖さが消えて安心できるようになってきたボクはふとんから顔をだしてその人を見た。
 本当に優しそうな顔をしてボクを見ている。

「いまどき珍しいね。こんなにも黒くて長い上、触っていて気持ちがいいなんて」
「あ、あの――――」
「どうかしたの?」

 手の動きが止まった。するとさっきまでの気持ちのいい感じが消えていくのが分かった。

「もっと――――」
「うん?」
「もっと、撫でてくれますか――――?」

 自分でも何を言っているのかわからないぐらい、緊張というより混乱していた。
 
「いいよ」

 望んだ通りの答えを聞けたボクは嬉しくなった。
 そして何度となく、その人に髪を撫でてもらった。

「そうだ。後でその髪をくしでといてあげるね」

 ボクは「うん」と答える代わりにうなずいてみせた。
 どこの誰かわからないのに優しくしてくれるその人に触れられることに対して何も抵抗がなかった。
 嬉しい気持ちと少し恥ずかしい気持ちになる。
 でも――――。

 体を起こそうとしてふとんをずらすとパジャマの間から包帯が見えた。
 一瞬何かわからなかったボクはその人がいるのにパジャマを脱いでいくと、なぜか体中に包帯が巻かれていた。
 そればかりではなく、腕にもあり頬を触るとガーゼがついている。
 取っていく間、体中から痛みが伝わってくる。

「なに――――これ?」
 
 その人にすがるようにボクは叫んだ。
 記憶のないところでボクになにがあったのか。
 何も覚えていない恐怖に震えるボクをその人は優しく抱きしめてくれた。

「大丈夫。大丈夫だから」

 その人はどこまでも優しくボクを撫でてくれた。

 窓の外は白い雪が世界を純白に染めていっていることをボクはその人の胸の中で知ることはなかった――――。
スポンサーサイト




コメント
▼この記事へのコメント<(あれば表示)

■ コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

▼この記事へのトラックバック(あれば表示)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。