うさぎの草むしり堂
主にオンラインゲーム(ラグナロクオンライン等)と日常についてつづられています。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ブログ限定小説:Snow Sky
第二幕 降り続く夢の雪 (5)



 別に何か特別な事をすることなく、ボクとみかど様は公園の小高い丘にある大きな樹の下でたくさん話をした。
 ほとんどボクが一人で話していたけど、みかど様は嫌な顔をしないでずっと聞いてくれた。
 毎日どんな風に過ごしているか、ご飯の量が多くて何度も残してしまい迷惑をかけていることなど、ボクが感じたままのことを時間を忘れて話した。

「みんな良くしてくれているんだね」
「はい。ボクにはもったいないぐらいに」
「そんなことないよ。みんな月姫のことが好きになっているんだと思うよ」
「?」

 何か他の人にしたのだろうかと考えた。
 いつも、桜さんに起こしてもらって朝ごはんを食べて、のんびりとお茶の時間を桜さんと過ごし、お昼ごはん、お茶の時間、晩ごはん、お風呂に入って寝る。
 ただ、それだけなのにボクを好きになる理由が見つからなかった。

「ボクは何もしてないですよ?」
「そうだね」

 あっさりと認めるみかど様にボクは困った。
 
「その答えだってもいつかわかることがあるよ。だから、気にすることなく今までどおりに過ごして」
「はい――――」

 そういうのであればその通りにするしかなかった。
 でも、このままではダメだと思っていることも本当だった。

「私は今のままいてくれると嬉しいけどね」

 その言葉を聞くと嬉しかったけれど、いつまでも甘えているわけにもいかない。
 必ずどこかでお別れしなければならないときがくるから、その時までに何かしてあげたかった。

「それにしても」

 みかど様は手を伸ばしてボクの髪を握った。

「桜さんも言っていたけど、月姫の髪って本当に綺麗だね」
「そうですか?」

 桜さんに毎日、髪をといてくれているからではと言うと、

「なんていうか、黒色なのに銀色のように見えるときがあるんだ。錯覚かもしれないけれど」
 
 鏡の前で桜さんに髪をといてもらっているとき、ボクも見たけれど銀色には一度も見えなかった。
 でも、桜さんが一度だけ不思議な事を言った。

『月姫様は一度髪の色を変えましたか?』

 もちろんそんなことは知らないので、一応変えてないと答えた。
 それっきり桜さんはそのことについて何も言わなくなったけれど、ボクはわずかに覚えていた。

「まぁ、それも記憶が戻ればわかることだから今は気にしても仕方ないね」

 すべては記憶が戻れば解決するはずなのに、ボクはこのままでいたいと願ってしまう。
 不安な気持ちがボクにそう思わせているのか、それとも本当に願っているのかすらわからない。
 みかど様の服を握った。
 こんな気持ちを消してくれるのはみかど様しかないと思った。

「あ、あの――――」
「うん?」

 微笑んでくれるみかど様の顔を見ると言えなくなってしまう。
 言えば困った顔をするに決まっているから。

「いえ――――なんでもないです」
「どうかしたの?」

 心配そうな声でボクに聞いてくる。
 
「私にできることがあれば何でも言って欲しいなぁ」

 言えば迷惑になる。
 だから言いたくても言えない――――。
 
「月姫?」
「なんでもないです――――。本当に――――」

 ボクはみかど様から顔を隠すように両手で抑えた。
 すると、体がなぜか動いていく感じがして両手を少し離すとみかど様がボクを自分の体に押し付けていた。

「みかど――――?」

 でも、みかど様は何も言わずにボクの背中に手を当てた。

「よく、お母様がこうしてくれてね。辛い事や悲しい事で私が悩んでいると抱きしめてくれた」
「みかど様の――――?」
「うん。もう病気で死んじゃったけどね」

 どこかみかど様の声は寂しそうだった。

「だから月姫にも同じ事をしてあげる。こうしていたら月姫の辛い事や悲しい事を少しでも忘れさせて上げれると思うから」

 ボクはみかど様の温かさが伝わってくるように思えた。
 こんなにも優しくて温かいみかど様を何度も困らせているボクがなんだか情けなく思えたけれど、それ以上にみかど様の温かさが気持ちよくてほんの少しだけ辛い気持ちが消えていくように思えた。

「みかど――――」
「うん?」
「もう少しだけこうしててもらってもいいですか?」

 ものすごく変なお願いだとわかっているけれど、もう少しだけこの温かさを感じていたかった。

「うん。月姫が満足するまでこうしていてあげる」
「はい」

 後で思い出すと恥ずかしいぐらいボクはみかど様に甘えていた。

 
スポンサーサイト




コメント
▼この記事へのコメント<(あれば表示)

■ コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

▼この記事へのトラックバック(あれば表示)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。