うさぎの草むしり堂
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ブログ限定小説:Snow Sky
第二幕 降り続く夢の雪 (4)



 その日の朝ごはんは美味しかった。
 みかど様がいるというだけでこんなにも美味しいのは不思議な事だった。

「ご馳走様でした」

 食べ終るとこう言うようにとみかど様が教えてくれ、両手を合わせることも今では当たり前に出来ていた。
 この後はお仕事にいってしまうからまた夜まで会えなくなってしまう。
 その寂しさを我慢しようといつも思っているけど、うまく出来ない事が多かった。

「さて、今日は一緒に外にでも出ようか」
「えっ?」
「どうかした?」

 お仕事のはずなのにどうしてそんなことを言うのだろうと思った。

「今日は休みだから一日中、月姫といられるよ」
「よかったですね、月姫様」

 美味しい紅茶を桜さんは入れながらボクに言ってきた。

「今日は天気もよろしいですから、お二人でお出かけしてはどうですか?」
「おでかけ――――?」

 まだよくわからないボクはみかど様のほうを見る。

「それとも出かけるのは嫌?」

 そんなことはまったくない。
 一人でいくのなら怖いけれどみかど様が一緒なら大丈夫。

「行きたいです。どこにでも――――」
「じゃあ、決まりだね。桜さん、あとで何か作ってくれるかな?」
「そう言われると思いましてすでに準備はしてありますわ」

 桜さんはこうなることを知っていたのだろうか?
 ボクは久し振りにみかど様と一緒にいられることに対してすごく嬉しかったため、あまり気にすることも無かった。
 そうして、ボクは桜さんに着替えを手伝ってもらって、髪も丁寧にといてくれた。
 お気に入りの紺色のリボンをして、ボクはみかど様の元に行くと、「かわいいよ」と言ってくれた。
 それから桜さんからお弁当をみかど様がもらって外に出た。
 上を見上げると青空が広がっていて、とても気持ちよかったけど寒さで体が震えた。

「これつけていたらいいよ」

 そう言ってみかど様は首に巻いていたマフラーをボクの首に巻いてくれた。

「のんびり、公園にでも行こうか」
「は、はい」

 差し出された手をゆっくりと握って、二人で歩いていった。
 
 お屋敷を出て道を歩いていると人がたくさん歩いていた。
 誰もが寒そうにしていたけれど、ボクはみかど様のマフラーのおかげで少しだけ温かい気分になっていた。
 お店がたくさんある通りを過ぎて公園につくまで時間がかかったけれど、その間にもみかど様と色んな話をしていたから気にならなかった。

「今日は日曜日だから人がいるかもね」

 みかど様の横を歩いていき、1本の大きな樹の前までやってきた。
 後ろからは何人かの人が楽しそうに話をしているのが聞こえてくる。

「ここにしようか」
 
 草の上に敷物をひいてボクたちは座った。
 公園を見下ろせるぐらいこの樹は少し高いところにあった。

「初めて外に出てどう?」
「少し怖いです。でも――――」
「でも?」
「みかどさ――――、みかどがいてくれるからすごく楽しいです」

 みかど様の前では「様」を言ってはならないけど、つい言ってしまいそうになる。

「少しは何か思い出せた?」
「いえ――――」

 記憶はまったく戻っていない。
 それどころか、記憶をなくしていることすらこのところ忘れていたように思えた。
 考えてもダメなものはダメなんだってどこかで諦めているのかもしれない。
 思い出すことが出来ればいいなぁと半分どうでもいいって感じだけど、みかど様や桜さんたちを忘れてしまうのではないかと思うと、このままでもいいかもしれないとも思っていた。

「早く記憶が戻ればいいのにね」

 みかど様はボクの記憶がもどることがそんなにもいいことなのだろうか。

「みかど――――」
「うん?」

 そのことを言うのが怖くて言葉には出来ない。

「なんでも――――ないです――――」

 忘れられたくない。
 その思いがボクの中で暴れていた。

「記憶が戻れば、今以上に楽しい事が増えるよ」
「ほぇ?」
「だってそうじゃない」

 何をそんなに楽しそうに言うのだろうか。

「今の月姫は記憶を失っていることに怖いって思ってるよね?」
「はい――――」
「なら、記憶が戻ればその怖いってことがなくなって、もっと私といろんなことが出来ると思うよ」
「いろんなこと――――?」

 みかど様の言っている事がよくわからなかった。

「つまり、もっと楽しいことが増えるって事だよ」
「楽しい事?」
「記憶が戻ろうが戻らなくても月姫とこうして一緒にいたいってことだよ」

 一緒にいてくれる――――。
 その言葉は今の不安な気持ちを消してくれた。

「で、でも、記憶が戻っちゃうとみかど――――のこと忘れてしまいますよ?」
「それでもいいよ。そのときはまた初めから始めればいいことだし」

 みかど様は笑顔でボクの髪を撫でてくれた。
 どうしてこんなにもボクに優しくしてくれるのだろう。
 出会ってからそんなに時間が過ぎているわけでもないのに、ボクと一緒にいたいって言ってくれる。
 すごく嬉しくなった。

「だから、今は無理に思い出さなくてもゆっくりと思い出していけばいいよ」
「は、はい」

 みかど様にそう言われると、ボクはなぜか安心してその言葉に甘えられる。

「あ、でも、このことはまだ桜さんたちには秘密だよ。先走りされそうだから」
「はい」

 何を言われるのだろうと思ったけれど、みかど様と二人っきりの秘密を持つことは楽しく思えた。
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