うさぎの草むしり堂
主にオンラインゲーム(ラグナロクオンライン等)と日常についてつづられています。
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1?9 臨時PT
【そっちいきました】
【支援は任せて】
【やばいSP切れる】

 今まで体験したことの無いほどPTというものは大変なものだ。
 一人や二人で動くより周りを見ることをしなければ危ないことに何度もあった。
 一段落して安全圏で休んでいると、女ハンターの『リシェル』が声をかけてきた。

【あんた、いつもソロをしていた騎士さんだろう?】
【そうだけどそれがなに?】

 ユーリと出会う前の自分を知っているような口調だ。

【オンラインでソロするなんて酔狂な奴だなって思ってたんだけど、いつの間にこんなかわいい彼女と一緒なのかなあって思ってね】
【彼女?】

 何のことを言っているんだ?
 ユーリの方を見るとプリーストに色々と支援のアドバイスを受けている。

【彼女じゃあない】
【そうなの?でも見ていたらあんたを優先的に支援しているからマリが不思議そうにしていたよ?】

 『マリ』というのは男プリーストで名前からすればリアルでは女ではないかと思った。
 もっともここではリアルなんて関係はないのだから無用な詮索なんかしないほうがいい。

【アコのままで70超えているのだから普通はPTでもお荷物にしかならないのにすごく頑張っているわね】
【別にボクたちは効率を求める狩りをしているわけじゃあないさ」

 ユーリと組んでからソロのときよりも経験値の稼ぎは悪い。
 だが、それが気に入らないわけでもなんでもない。
 こういう楽しみ方もあるものだと意外な発見に驚いているぐらいだ。

【まぁうちらものんびり派だから丁度良いんだけどね。マリなんか後輩が出来て嬉しそうだし】

 優しそうに教える姿を見ていると、ボクなんかといていいのだろうかと思ってしまう。
 戦闘職と支援職ならば考え方も育て方も違う。
 当たり前のことなのにどこかで苛つく自分がいた。

【まぁあれだわ。うちらでよければいつでもOKだから】
【考えとく】

 あまり群れることが好きではないボクでも初PTの感想は悪いものではない。

【ほら敵がきた。みんな戦闘準備】

 見ればどこからか現れた敵がこちらに向かってきた。
 そして再び戦いが始まった。
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1?8 ほんの少しの変化
 アドレスを手にしてからといってボクと彼女の関係が変化することも無かった。
 このゲームの世界だけの関係なのだから現実世界なんて関係ない。
 それでも気にならないといえば嘘になる。

 二人で狩りをしているときでも会話をしている時でも、どうしてアドレスなんて教えたのかわからないままだった。
 普通ならば自分のアドレスを教えて何かと連絡がしやすくなることを望んでもいいはずなのにボクはそういう気分にはなれなかった。

【もう少しでJOBが50です】

 嬉しそうに話すユーリにボクは今日も自分から話を始められなかった。

【レベルもだいぶ上がったようだね】
【のんびりとですけど少しずつ上がっています】

 効率重視でないマイペースでもそれなりに数をこなすと上がっていくものだ。
 騎士とアコライトだなんて他から見ればどう見てもアンバランスだろう。
 狩場で誰かに見られると不思議そうに見られたり、せっかくユーリが支援したうえに辻支援をしてくる。
 それでもユーリは嫌な顔を一つせず嬉しそうにお礼を言っている。

【誰かに何かをされたらお礼は言わないとダメですから】

 生まれてこれまで一度も感謝の言葉を口にしたことの無いボクからすれば彼女はずっと大人びている。
 その影響なのかログインしてユーリと会うと挨拶をしている。
 変な気分になるが悪くない。

【あのさ】
【はい?】
【もしよかったら他の人とPTを組んでみる?】

 ボクからそんなことも言わなかっただけにユーリは驚いているようだ。

【私はいいですけどシンはいいのですか?】
【あんまりなんだけど、どうかなって思ったから】

 ユーリはほんの少し考えてから答えた。

【それじゃあ試しに行ってみましょうか】

 結局のところボクは彼女を発破をかけてほしかっただけなのかもしれない。
 二人でいく臨時広場。

【すいません。アコライトと騎士いいですか?】

 ユーリと一緒にボクは初めてのPTへと参加していった。
1?7 迷い
 彼女がやられて以来、ボクたちは少しだけ変わったような気がする。
 今まで相手を思いやることなんてしなかったボクが彼女に対してだけ気にかけるようになっていた。
 正直なところ驚いていた。

【間に合わなかったらこれを使って】

 店売りの回復アイテムをいくつか渡すと嬉しそうにお礼を言ってくる。
 こういうのも悪くないものだ。
 人と距離を置いていたいままでの人生がこういう小さなきっかけで変われるのならばそれでもいいかもと思うほど僕としては前向きになっていく。

【私もシンに負けないように頑張ります】

 何をどう頑張るのか知らないが悪い気分にはならない。
 こういうのが友達なのかと思うと悪くない。
 もっとも現実世界では友達は今もいない。

【シン】
【なに?】

 一通り狩りをしてからいつもの場所で話をしているとボクの名前を呼んでくる。
 そして黄色い文字で携帯のメールアドレスが送られてきた。

【これは?】
【何かあった時の連絡方法です。アドレスを知っていれば連絡も簡単に取れるから】

 この世界でしか会うことの無い僕たち。
 その中での友達だからこそようやく気を許せるようになっていた。
 それを現実世界まで繋げてこようとする。

【私が勝手に送っただけですから、そのまま流してくれてもかまいませんから】

 ユーリからすれば何でもないことなのに僕は何も言い返せない。
 どうすればいいのかわからないまま、とりあえずアドレスをメモした。

【今日はそろそろ落ちますね】
【う、うん。お疲れ】

 手を振って彼女は落ちて行く。
 そして僕は一人、渡されたアドレスをぼんやりと眺めていた。




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